2013年10月4日金曜日

大人になれない男女

精神病理予防としての「勇気づけ対応」の必要性

精神病理予防として、「勇気づけ対応」の重要性を機会のある度にお伝えしています。
「勇気づけの対応」は自立と責任感をそだて、自己肯定感を持てる大人に育てます。

次のコラムは 精神科医:齋藤 学氏が書かれたものです。(毎日新聞:1999年8月24日)
日々の親の対応が病理につながるとおっしゃっています。

大人になれない男女(副題:良い子の延長)

 少子化の時代を迎えてからの日本の男性の多くは、母親の喜ぶ顔見たさに子供時代を「勉強少年」として過ごしている。勉強嫌いで成績が上がらず、「母の良い子」を続けることを早々とあきらめてしまった場合はまだいいのだが、なまじ成績がいいままでいると、勉強少年のまま成人に達してしまう。

 日本の官僚組織や大企業は、この手の「良い子」ばかり採用してきたので。日本は恐るべき、「勉強少年国家」になってしまった。こうした人々は、試験の答案を書くのは得意だが、変化する現実を把握して対応することは苦手である。

 国家や企業を「お袋」にして、その中でぬくもろうとしている子供達に、国の舵取りをゆだねて疑問を持たずにいる私たち自身も、どこかで子供心から抜け切れていないのかもしれない。

 こうした「子供のままの大人」は、男性だけに見られるわけではない。こうした勉強少年を作りだす母たち自身も、「マザコン夫」や「暴力夫」につかえ続ける「良妻」たちも、大人とは何かが分からない人たちなのである。いかに自分が選らんだ者とはいえ、配偶者から人としての尊厳を傷つけられてまで、“主人”などと奉って仕えることはない。

「あんたみないな子供と一緒にいて、私の人生を浪費するわけにはいかない」とはっきりさせるのが大人の女というものだ。

 夫と別れるかも知れないと思えば、それに伴う責任も出てくる。しっかり稼いで行き抜かなければならないのだから、自分が時給いくらの人間であるのかを、普段から知っておかなければならない。そして少しでも賃金の高い労働者になれるように準備するようになる。

自分が生きるための責任も果たさないで、主婦優遇の税制や年金制度に寄りかかろうとしても、将来は暗い。子育てがてらのパート勤務などとのんきなことを言っている女性が多いから、女性の賃金はいつまでたっても上がらない。保育園の整備も進まない。

 こうした女性に限って、「子供のために動きがとれない」と言う。「別れたいのはやまやまだけど、お前がいてはねえ」などと悲痛な顔をされる子供のほうがいい迷惑だ。

こんな愚痴の聞き役を務めているうちに、持たなくてもいい罪悪感にとらわれて、大人になってからうつ病者として過ごす人たちのなんと多いことか。